あらすじ
自殺する間際にメッセージを録音して残す人がいる。それを集めて記事にしないか?
編集者時代の三津田に企画を提案したライターが突然失踪。後日、三津田の元に届いた1本のテープには何が。カセットやMDに録音された体験談に材を取った6つの怪異譚と、それらを連載し本になるまでの、担当編集者との裏話的なエピソードから成る作品集。
この物語を読むあなたは恐怖を「体感」することになる。
おすすめポイント
- 小説(フィクション)なのに、現実が侵食されていく感覚を味わえる
- 短編ではあるが、それぞれがめちゃくちゃ怖い
- 文庫化にあたり、加筆されているので、さらなるメタ体験ができる
ポイント1.小説(フィクション)なのに、現実が侵食されていく感覚を味わえる
フィクションだと分かっているのですが、幕間の作家と編集者とのやり取りが現実にあったのかと思われるほどのリアリティさです。
このメタ感が、自分の現実とリンクして、このまま読み進めると、自分にも異変が起きるのではないかと不安になります。また、『異変を感じたら、一旦読むのをやめるよう』注意書きが入っており、さらに不安を煽られます。
ポイント2.短編ではあるが、それぞれがめちゃくちゃ怖い
全部で6編、怪談が入っています。
それぞれ、違った怖さがありますが、特に『死人のテープ起こし』は秀逸でした。
自殺しようとする際に、テープで自身の声を録音している、という設定だけで、怖いのですが、その際に意味不明の怪異に見舞われる、そして、絶望しながら最期を迎える。
怖すぎます。
また、何が起きたのかの解明もなかったのが、ミステリ好きとしては、やや残念でした。
『屍と寝るな』『集まった四人』は逆に、最後、真相に至った時に、ぞくっと鳥肌が立ちました。ミステリ寄りの内容でした。
ポイント3.文庫化にあたり、加筆されているので、さらなるメタ体験ができる
これから読むなら、断然文庫版をおすすめします。
幕間の作家と編集者のやり取りが、当作品が出来上がる過程とリンクしているのですが、文庫化する際の話が加筆されているようです。
文庫化を終え、刊行した後、編集者はどうなったのか、読み終えた後、めちゃくちゃ心配になりました。
コメント